「中国、上海試練の旅」第14話

中国での生活も2ヶ月が過ぎ撮影も佳境に入ってきたある日、この日は日韓ワールドカップの決勝戦!ブラジル対ドイツの試合が行われる。その模様は当然中国でも放送される。撮影は夕方で終わるから部屋にこもってゆっくり観戦しようと、朝からのロケに出発するためにロビーに降りていくと、スタッフ全員が集まってなにやら大声で話し合っている。また助監督が怒られでもしてるのかな~と様子を伺うとなにかおかしい。よくみると輪の中に警察官も交じっている。これはただ事じゃないな?と思い「どうしたの?」と聞くと、な、な、なんと共演者の女性の部屋に泥棒が入ったらしい、彼女が寝ている間にそっと入って鞄を持っていったらしい。彼女は途中で気づいたらしいが変に騒いで危害を加えられるのが怖くて黙ってらしい。部屋は暗く顔もよくみえなかったと。お金は別の処においといたから大丈夫だったみたいだが、その鞄が叔母ああちゃんの形見だから絶対にとりかえしたいと涙ながらに訴えている。しばらくするとスタッフがやってきて今日の撮影は中止ですと言ってきた。僕は思わず「えっ?なんで?鞄が盗まれたから?」と聞くと「そうです、これからみんなで警察に行って一人づつ事情徴収です。」なんとそのホテルに泊まっていた人間全員が警察に呼ばれる事になった。「まずはスタッフから行きますので、キャストの人は部屋で待っててください。」そういうことなら仕方ないと部屋に戻った。しかし待てど暮らせどお呼びがかからない。ようやく連絡がついたと思ったら僕らの取り調べは夕食後だという。う~~~~、ではサッカーは観れないなと早めの夕食を取って警察に向かった。

現場に着くと一人づつ部屋に入れられた。そこに2人の警察官が来てなにやらしゃっべているが当然中国語なのでチンプンカンプン!

「I’m Japanese ! I can’t speak Chinese.」というと「OK ! Just a moment .」 と言って1人が部屋を出て行った。僕は英語が話せる人がくるのかな?と思い待っていると今度は違う警察官が入ってきた。すると大声でもう1人の警察官になにやら話しかけた。すると「Just a moment.」と言い今度は2人がいなくなった。

しかしそれから何分待っても2人は戻ってこない!しーんと静まった取調室でぼーっとしていると、たまにヲ~とかア~とかのどよめきが聞こえてくる。1時間ぐらい待たされても何も始まらないのでしびれを切らし取調室を出てみると、これまたびっくり!僕のことなどほったらかしでみんなでワールドカップを見ていた。これにはさすがの僕も腹が立ち、「お~い!なんもしないなら帰るぞ!俺だってサッカー見たいんだよ!」と言うと1人の中国人が僕の肩に手を乗せて笑顔で「ブラジルGood ! 」と話しかけテレビの前に座らせられた。どうやら取り調べは試合の後にするらしい。なんだよだったら最初から俺も観戦させてくれればよいのに!と思い後半戦を彼らと一緒に見た。試合が終わり取り調べが始まるとものの5分で終わってしまった。おいおい!こんなに早く終わるならサッカー始まる前に終わらせられたんじゃないのかい?

しかしここは中国

そんなことは気にしない!

取り調べが終わり、僕らを乗せたバスがホテルへ向かい走っていると突然どか~ん!とものすごい爆発音が!

「ウワ~今度は何だ?テロリストか~?」

つづく

「中国、上海試練の旅」第14話

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